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オックスフォードの魅力

Oxford とアメリカ

ローズ奨学金


オックスフォード市内にあるローズ財団

オックスフォード大学には、多くのアメリカ人留学生が学んでいます。その数は、ケンブリッジ大学に学ぶアメリカ人の3倍近くにもなります。この背景にはローズ奨学金の存在が深く関係しています。 ローズ奨学金は、Cecil Rhodes(アフリカの鉱山王)がその莫大な遺産をオックスフォード大学で学ぶ留学生(男子学生)への奨学金基金として残したことに由来します。1903年に第1回の奨学生が選ばれており、世界で最も古い歴史をもつ奨学金です。ローズ奨学金は英語圏を中心とした国の学生に限定して与えられていますが、その3分の1以上がアメリカ人学生に割り当てられています(毎年32名)。アメリカで奨学金制度を始めたフルブライト氏、クリントン元大統領、オーストラリアのホーク首相なども、ローズスカラー(ローズ奨学生)としてオックスフォードで学んでいます。また、カーター大統領の時のホワイトハウスの主要スタッフにローズスカラーが多かったことは、あまりにも有名です。カーター大統領自身はローズスカラーに選ばれませんでしたが、最後には彼らを使っていると自分を慰めたという逸話も残っています。

Cecil Rhodesはその長文の遺書の中で奨学金設立の理由を次のように述べています。「英国の大学において若き入植者たちを教育することは、彼等の生き方における視野を広げるだけでなく、帝国の団結を図る上で植民地と英国の双方にとって有益である。また、この制度が広く受入れられ、英語を母国語とする世界の人々がより強い絆で結ばれてゆくことを希望する。」  奨学金の対象学生の選考にあたって、彼は以下のような判断基準を管財人に指示しています。

  1. 文学的および学術的能力
  2. クリケットやフットボールなど野外スポーツでの実績
  3. 男らしさ、誠実さ、義務を遂行する勇気、弱者への思いやり、親切心、私心がない等の性格
  4. 学校生活を通じての態度、クラスメートとの関係やリーダーシップ

当時この奨学金は男子学生のみに限定されており、女性が対象外でした。この頃のオックスフォードには女子学生はほんの僅かしかおらず、一般的には男性のみの大学とみなされていたからです。現在では学内は男女同等で、特定された国の19才〜25才の男女が対象となっています。奨学生には、大学の授業料が全て財団から支払われる他、月に£976(約20万円)の生活費が支給されます。

ローズ奨学生が最初にオックスフォードで学んだのは1903年、以後幾多の変遷を経て今日に至っていますが、現在の奨学生数の国別枠は以下の通りです。

アメリカ 32名、カナダ 11名、南アフリカ 9名、オーストラリア 7名
ザンビアおよびジンバブエ 3名、ニュージランド 2名、インド 3名
ジャマイカ、香港、シンガポール、ケニア、パキスタン、マレーシア、ナイジェリア、カリブ諸国 各1名、ドイツ 2名

英語国の他に、Rhodesはドイツも奨学金対象国に含まれています。これはセシル・ローズが3つの超大国(大英帝国、アメリカ、ドイツ)が相互理解を深めることにより戦争を回避できると信じ、教育を通して国同士の絆を強めることを願ったことによる、とされています。が、実際にはセシル・ローズの人種差別主義が強く影響しているとも言われています。

アメリカ人留学生

以下は、オックスフォード大学に在籍する学生数のデータです。留学生の中では、アメリカが最も人数が多く、中でも大学院と聴講生(Visiting Student)での割合が高くなっています。特に聴講生(Visiting Student)として受け入れる留学生の70%以上がアメリカ人で占められています。これは、アメリカの大学の多くが採用しているJunior Year Abroad という制度によるものと思われます。これはアメリカの大学の学部に在籍する学生が、3年次(Junior)を英国の大学で過ごし、その1年間を卒業必要単位として認めてもらうという制度です。聴講生(Visiting Student)の引き受けは、英国のほとんどの大学が行っていますが、一般学生と同じ授業をとるため、高いレベルの英語力が必要となります。

2006年度 オックスフォード大学の学生国籍データ
国 籍 学 部 大学院 聴講生
Visiting
合 計
UK 9,598 3,838 11 13,447
EU諸国 879 2,302 54 3,235
EU以外 1,222 4,029 404 5,655
内 アメリカ 1,437
その他 4 4 3 11
合計 11,703 10,173 472 22,348

※2014年Oxford Universityデータより

〜オックスフォードに学ぶアメリカ人〜 デニス君の思い出

オックスフォードで学ぶアメリカ人学生というと、デニス君のことが思い起こされます。彼との出会いは40年も昔、オックスフォード大学のペンブルックカレッジでの事。当時、私はこのカレッジで春・夏休みの年2回、日本人のための英語研修を実施しており、英語教師の一人としてこのプログラムに参加していたのがデニス君でした。

ペンブルックカレッジは1624年創立。故フルブライト、アメリカ上院議員が学んだカレッジとして有名です。フルブライト氏は、ローズ奨学生としてペンブルックカレッジに学び、その時の体験がアメリカのフルブライト奨学金制度に結びついたといわれています。また、スミソニアン博物館の由来である、スミソン氏もここで学んでいました。このようにアメリカとの関係が深いこともあり、ペンブルックにはアメリカ人留学生が多く学んでいました。

デニス君はハーバード大学を優秀な成績で卒業し、オックスフォード大学で2つ目の修士号に取り組んでいました。オックスフォードに学ぶということは、アメリカ人のデニス君にとって、どういう意味があるのか尋ねたとき、彼はこんな風に答えてくれました。

「アメリカの大学では、試験に追われて忙しい生活を送っていたけれど、ここオックスフォードの教育スタイルは全く違う。授業はチュートリアル(個人指導)で、じっくり深く考えることが中心。“考える”ことの意味を学んだ気がする。それと、オックスフォードに来て時の流れの実感というか、息づいている文化・歴史に向かい合っているという感覚を得られたと思う。」

その後もオックスフォードで何人ものアメリカ人留学生と知り合う機会がありましたが、皆心からオックスフォード大学に畏敬の念を抱いていたように思います。アメリカという国が誕生する前から、その歴史を刻んでいるオックスフォード大学。その伝統と文化はアメリカ人の彼等にとっても精神的なルーツなのだと強く感じました。

デニス君は留学中に日本人学生を教えたことがきっかけで日本に興味を持ち、アメリカに帰国後イエール大学で博士号をとり、現在はアイビーリーグの名門大学で教授となり、日本文学を教えています。

(K.IKENO)


ペンブルックカレッジ中庭